HOME > 活動レポート > 第142回北海道診療情報管理研究会学術集会(報告)

第142回北海道診療情報管理研究会学術集会(報告)

 IMG_0004
平成27年9月5日(土)、モロオANEEX-1ビルの会議室をお借りし、第142回学術集会を開催いたしました。今回は10月より施行される医療事故調査報告制度をメインテーマに2名の講師をお招きしての講演でした。
 当日の参加者は計71名でしたが、診療情報管理士はもとより、病院長や医療安全管理者、事務管理職など医療安全対策に関わる関係者も多数参加されておりました。

IMG_0007
 第一部の講演は「医療事故調査制度と病院の対応」についてJA北海道厚生連コンプライアンス・リスク統括部長の五十嵐秀彦氏にご講演をいただきました。
 法律用語は非常に言い回しが独特で、ましてや医療事故という非常に解釈の難しい領域ではりますが、大変分かりやすくお話をしてくださいました。
 医療法改正に至る経緯や制度施行に係る検討会の議論の経過など、実際に傍聴に行き見聞きした様子も交えて説明いただき、医療事故調査制度の一つ一つの文言が、どのような目的で、どのような意図を含んで文面化されたか、そうした背景を知り、より理解を深めることができました。
 また、この制度運用にあたって、どこに気を付け対応していくべきかポイントを押さえて解説いただき、この制度が非常にセンシティブなものであると感じました。
 五十嵐氏の講演は非常にテンポよく軽快な口調で、みな引き込まれるように聞き入っていました。

IMG_0014

 第二部の講演は「医療紛争事案で学ぶリスクマネジメント」について弁護士法人 佐々木総合法律事務所所属の弁護士・医師のダブルライセンスをお持ちの福田知洋先生にご講演をいただきました。
 福田氏は実際の医療紛争事例から医療事故調査制度をアプローチしていただきました。
 医療紛争は減少傾向にあったものの、ここ1~2年はまた増加傾向にあるとのことですが、背景としては患者側の権利意識が強くなっている事もさることながら医療過誤とは呼べない案件もたくさん出てきているとのことでした。
 事例の説明では、やはり診療記録の証拠能力が非常に高く、また高いが故にしっかりとした記録でなければ医療側にとって非常に不利になるものであると再認識致しました。診療記録の改ざん事例も紹介いただきましたが、記録の改ざんは医療側に何らメリットがないことを解説いただきました。
 各事例の後には医療事故調査の要件に合致するか否かの解説がありましたが、前段の五十嵐氏の講演で制度の目的や概要を理解しつつも、実際の事案一つ一つで考えると途端に判断が難しくなると感じました。
 講演の最後には、医療事故調査のモデル事例を紹介いただきましたが、誠実に調査を行い誠実に報告したとしても、患者側が理解し納得することには必ずしも繋がるものではなく、この制度の難しさを感じました。
 
 医療事故調査制度は、今後,病院運営において非常に大きなウェイトを占める業務となるでしょう。
 診療情報管理士という立場は、当然ながら診療記録の管理という面では医療事故とは関わるところがあるものの、実際の医療過誤事案や調査制度の中で直接かかわるものではないかもしれません。しかし、この制度を知っているか知っていないかでは、日々の業務の関わり方が随分違うのではないかと思います。
 そうした意味では、今回のテーマは見識を広げ深める良い機会になったのではないでしょうか。

IMG_0016

 最後に、ご多忙の中ご講演いただきました五十嵐氏、福田氏に感謝を申し上げるとともに、参加されました会員の皆様にもお越しいただきましたことに御礼を申し上げます。
 今後も皆様の意見を取り入れ、魅力ある研究会となりますよう企画してまいります。ご意見、ご感想等ございましたら、役員・事務局へご遠慮なくお寄せ下さい。

文責:鈴木